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劇場版 鋼の錬金術師 ネタバレ感想4

ロイとエド

冒頭のハボックとブレダがロイを訪ねるシーンに関してはあまりいい出来だったとは思えなかった。
笑いを取りたかったのであれば滑っていると思うし、ロイらしからぬ所作だったとしか思えない。
いくら伍長とは言え、二人への第一声があれでは厭味くさいではないか。
その直後に、にやりと笑うくらいの豪快さが欲しかった。

原作に比べ、テレビ版のロイが内面の弱さを強調されているとは思っているが。
それでも、テレビ版のあのロイであれば、部下の前だからこそ、自分は今も変わらず元気でやっていると、カラ元気の一つも見せ、こちらの女性は色白で美人が多いなどと、嘯いてみせたのではないだろうか。

彼が陽気であれば陽気であるほど逆に、ならばどうして中央に戻ろうとせず、錬金術を使わないのかと、その気持ちは引き立ったように思うのだが。

ハボックの煙草に火をつけようとするなど、わざと落ちぶれた様を部下に見せ付けているようで、逆に何か裏で虎視眈々と動こうとしているからこそ、あんな馬鹿な真似をしているのではないかと疑ったくらいだ。

もっと単純に暖炉に火を入れる時にさりげなくマッチを使うなどもう少しスマートな作りにはいくらでも出来たと思うのだが。
「(錬金術を)使おうとすると、私が愚かだったために命を落とした多くのものが見えてくる。こちらの目に」
この台詞がよかっただけに、もう少し彼らしいエピソードにして欲しかったと思うのはファンの欲目か。

そう。ここで重要なのはこの台詞だ。
「錬金術を使おうとすると」
雑誌の先行情報でロイは錬金術を使えなくなったとあったが、この台詞によりそれは否定された。
「使えない」のではなく、「使わない」のだ。
この台詞に安堵した。
錬金術は科学だ。知識の習得により会得が可能な技術のはずだ。
勿論素質は必要だが、ノーアの力のように非科学的なものではない。
どちらかと言えば、スポーツや芸術に近いだろう。
一流のスポーツ選手が怪我を負っても二流の選手より強いように、一度体得したものが使えなくなるようなことはないはずだ。

ロイは言う「私なりのやり方で国に尽くしているつもりだ」と。
「国に」と言った。「軍に」ではない。
彼のいう「国」とは、国益や新政府ではなく多分「国民」の意味だ。

錬金術の封印は、大方、国民の1人であるエドに対しての罪悪感からのものだろう。
エドの錬金術に目を奪われ、出世への駒として使える、ただそれだけの理由で。
家を捨てさせ、戦争に引きずりこみ、そのくせ、同士のように扱い、
エドがまだ年端のいかない、自分の半分ほどの年齢の子供であることをすっかり忘れてしまった。
まだ保護者が必要な子供であり、戦死すれば嘆く家族がいることも。
それなのに、エドの錬金術師としての強さや、人間としての強さばかりに目がくらみあげくの果てに殺してしまった(とロイは思ったのだろう)。
錬金術という魔物に踊らされた自分への戒めとして彼は錬金術を捨てたのだろう。

そして。
画面の暗さでしっかりとは把握出来ないのだが、どうも彼のホルスターに銃が見当たらないような気がするのだ。
さらに、歩哨兵とは、本来、前線を侵犯する敵を迎撃する為に置かれるもの。
ならば遠隔の敵に対するためライフル銃のように砲身の長いものを身につけるものではないのだろうか。
なのに持っているものは杖だ。
北の前線であるにもかかわらず?
かつて軍の命により、善人だったが故に射殺したロックベル夫妻への贖罪として銃を手放したのだろうか、そう思った。

自分が愚かだった為に命を失ったものたちの為への贖罪として、錬金術を封印し、銃を手にしない。

では何故、軍には留まる意味がある?
錬金術を使いません、銃は持ちたくありません。
なのに降格しようが軍から離れません。
そんな人間、軍にとっては無能以下だ。せいぜい盾にしかならない。

そう考えると、降格してでも軍にしがみついていたのは何らかの理由があり、あの無様な姿も実は仮の姿だったのではないか? という考えが浮上する。

と、まあ。
ここでそれらしい何か伏線でもエピソードでも見つかれば良かったのだが。
生憎とそんなもの見当たらない。

つまり。
ロイの中でも揺れていたのではないだろうか?

エドと再会した時、彼は「生きていると思ったよ」と言った。
生きていると思って「いた」わけではないらしい。
エドがいなくなってもう3年になる。
いくらなんでも長すぎるもう、生きていないだろう、そう思っても仕方が無い。
けれど。
そう思う反面で「もしかしたら」という気持ちも捨てきれずにいたのではないだろうか。
自分が救われるためにも。
シナリオブックでは、アルはまだエドが生きている事を信じているとウィンリィから聞かされ「それは辛い」と答えた。
信じ続けることは辛い。だから。
信じることに疲れたらやはり死んだのかもしれないとあきらめ。
それでももしかしたらと思える日もあり。
そんな風に、どっちつかず、と言えば聞こえは悪いが、そんな状態だったのではないだろうか?

それが。異変が起きアルが動いた事を知り、エドが関わっている、エドは生きているに違いない、そう信じられた。
だから即座にエドの為に動いた。
こんな騒動を起こすのは鋼のに決まっている。
そう思ったからこそ出てきた台詞なのだと思った。

殺してしまった人たちの為に銃は手にしない。
けれど。まだ生死の定まっていないエドに対しては。
エドがここに戻ってこない限り錬金術は使わない。
けれど。もしエドが生きて帰ってこれたなら、今度こそ彼の為に自分が出来る全てのことを。
それが彼なりの贖罪だったのではないだろうか。

ならば軍を捨てることは得策ではない。
必要であればその権力を行使する。
その権利だけは手放さない。

考えてみればいい。
あんな田舎にいて、何故すぐさまリオールや中央の情報が入ってきた?
あんな北方に飛ばされた人間がいきなり仕事を放り出して何故中央に飛んで来れたのか?
下手すれば敵前逃亡罪で死刑だ。
それなのに何故来れた?
決まってる。国家錬金術師は少佐相当の待遇が保障されている。
たとえ階級が伍長であろうとも。

エドが死んだのなら錬金術に封印を。
エドが生きているのならエドの為に出来るすべてを。
「私はその為に来た」ロイは確かにそう言った。

かつて自分の野望のために苦しめてしまった子供へ、今度は彼の望むものを与えるために。

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