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兵法って興味あります?(8月号ネタバレ)

8月号の感想に入れ込もうと思っていたのだけど、どうにも横道に逸れ過ぎになりそうだったし、時間がかかりそうだったので却下したネタです。その為多少8月号のネタバレとなっております。コミックス派の方ご注意ください。
 
それと。すみません。どうも文章が取り散らかってます。なんだかなぁ。もうちっと要領良く書けないものなんだろか。
 
さて。
アルのあの誘導尋問の上手さ。あれは前提条件のすり替えにあるのだと思う。
最初は「殺す・殺せ」だった話を、アルは「元の身体に戻ることを 諦める・諦めない」の「生きている事」前提の話にすり替えている。
しまいには。正常な思考を取り戻したザンバノとジェルソは、キンブリーから逃げ延びる「生き残る事」を前提とした話までしている。
これはアルの戦略と言ってもいい。
これが、アルの「人を死なせない」戦い方なんだと思う。
 
いきなり話が逸れますが。
まったくもって莫迦な話なんですけど。
ヒューズが昔言った「三十六計逃げるに如かず」と言う言葉。
のわこさまが前にこの辺りの事を書いていらしたのを読んで、実はこれが引っかかってました。
実は私、これ激しく誤解して覚えていたんですよ(笑)。
 
「三十六計逃げるに如かず」の、三十六計とは中国の「兵法三十六計」の事。
三十六計参照
 「如かず」は「如く」の否定。「同じ」ではない。「勝らない」「及ばない」という事。
「戦う事は逃げる事には及ばない」。
 調べると大抵こんな事が書いてある。
計略をあれこれ謀るよりも、逃げる事が可能な状況下であるのなら、敢えて戦いを避けて逃げろ、という考え方。
戦いで無駄に味方に人死にを出すくらいなら、今は逃げて機を待つが良策、という事ですね。
 
実はこれは誤訳なのであって。本当は。
「戦う」つまり「人を殺す行為」そのものから「逃げ」て勝つ方が勝る。
戦術ではなく、戦略で勝つという事。
武器を使わず相手を降伏させるという事。
無血戦争とか、無血開城とか。
同じ逃げるのでも、敵味方どちらの血も流さずに勝つという事。
 
なのかと思ってました(笑)。
 
だから「あれ?」と思って自分でもググって色々調べて、自分が誤読だったんだなぁと納得したんですが。
代わりに色々面白いものが引っかかってきたのが、こんな事を書いてるきっかけになるんだから。
ネタは拾っておくもんです(笑)。 
 
さて。
『外伝 軍部祭』で、ロイが言っていた、孫子の兵法。
「兵は拙速を貴ぶ」
「怒らせてこれを乱せ」
「兵は詭道なり」
 
http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.html

・「兵は詭道なり」
「怒らせてこれを乱せ」は、この中の1文です。
原文はこちらを参照。第一編 始計篇
 
要約(以下要約は全て自己流です)。
戦いとは正しき行いではない。卑しいものである。
敵を謀りにかけ、非道な行為を持って戦わなければ勝てるものではない。
 
これの前後に文がありますのでそれも合わせてかいつまむと。
 
戦う前に、勝つ為の5つの条件について討議しなければならない。
5つとは。
大義があるか、地に利があるか、天の時であるか、智・信・仁・勇・威があるか、軍規統率がとれているか。である。
どちらの国がよりこの点において優れているかで、戦いは決まる。
戦いが始まってしまえば、非道な行いをしなければ勝てたものではない。
戦う前の軍議において、勝算ありとなれば勝ち、勝算無しとなれば負ける。すでに戦う前に勝敗は見えている。
 
・「兵は拙速を貴ぶ」
このままの文は無いそうです。正しくは。
「故兵聞拙速、未睹巧之久也」
「故に兵は拙速を聞くも、未だ巧久(こうきゅう)なるを睹(み)ざるなり。」
 
要約。
多少不備があろうが短期決戦を良しとする戦術は耳にするが、巧みな長期戦なるものを見た事はない。
 
原文はこちらを参照。第二編 作戦篇
「故に」と付くからにはそこに理由が書かれている。
 
要約すると。
戦いが長引けば、補給に支障がでる。
そうなれば兵は精鋭を欠き、それに乗じて攻めてくる敵も出て来、例え智謀に長けた人物でも最善を尽くす事は難しい。と。
 
さらにこう続きます。
名将は、兵役に付く事を二度させず、補給は敵国で現地調達とする。
補給のパイプラインが延びれば、その分人手がかり出され、田畑は荒れ、備蓄は減る。
遠征すれば、敵国の備蓄を減らす事も出来る。
敵は殺さず、敵の利を奪うべきである。
敵から戦車を得たら手柄をたてた者に与え旗を付替えさせ自軍のものとし、捕らえた敵は厚くもてなし自軍に加える。
 
ほら、誰かさんたちのやった行為と重なりませんか♪
アルが敵だったキンブリーの部下2人を味方につけ、エドがスカーにウィンリィを託し共同戦線を張ったように。
捕らえた敵は、今味方として動いている。
 
で。ロイは引用していないのだけど。
これに続く、第三編 謀攻篇
 
ここでは、戦わずして勝つのが最良であるといった事が書かれている。
敵国を破るより、戦わず保全したまま勝つのが上。
最も良い兵法は、敵の策略の打破。次に敵の交友国にその関係を断ち切らせる。次に野戦。最も劣るのが城攻め。
(余談だけど、アニメの最後は城攻めだよなぁ・笑)
  
つまり何が言いたいのかっていうとね。
ロイが孫子の兵法を読んでいるのならば。
 
「兵は詭道」であるからこそ、会戦することの無意味さを知っているし。
「兵は拙速を貴ぶ」からこそ、長期に渡る徹底的な攻撃の無意味さも知っている。
敵の降伏を受けいれる事が最善の策であることも知っている。
 
イシュヴァール殲滅戦はこの全てを犯した戦いだった。
捕虜による人体実験に「仁」などない。
数年に及ぶ戦い。
敵の攻撃による補給の断絶。
敵の降伏を受け入れなかった。
 
軍の演習所でのあの発言って実は、自分だけに通じる彼なりの軍批判だった……のかも、しれない。
そう思って読むとまた見方が変わって来ないかな?
 
そして。
自分が一度は権力に屈服して受け入れた戦い方を、今、アルとエドが思いっきり否定してくれている。
そのことは、ロイにとって希望になると思う。 
 
さて。ついでなので。
孫子を読んだロイなら、漢書も読んでいたりしないかな? と思ったのがこれ。

「善師者不陳,善陳者不戰,善戰者不敗,善敗者不亡」(前漢書 刑法志第三 より)
 
勿論んなもん私に読めるワケが無く、『玻璃の天』(北村薫)という小説の中に出てきた訳を読んだだけなんですが。
以下小説から引用。
 
「--うまく軍を動かす者なら、布陣せずにことを解決する。しかし、その才がなく敵と対峙することになっても、うまく陣を敷ければ、それだけでことを解決できる。さらに、その才がなく実戦となっても、うまく戦えば負けない」
 
最後の「善く敗るる者は亡びず」についての訳の記載はありませんが。想像はつくでしょう。
 
エドやアルには出来なくとも、大佐という地位を持つ人間だからこそ出来る戦い方っていうのを、ここからロイが見出し、それを見せて貰えたらなぁっていうのが私の希望。

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コメント

りほさま
ほほー!すごいですね。
こういうところから、荒川先生が中国史好きだっての分かりますよね!
兵法については、三国志演義でもちらっと名前の出てくる、「楽毅」という人の伝記は面白いですよ。
「善く敗るる者は亡びず」というの、よく分かります。
お暇があれば(そしてお嫌いでなければ)ぜひ読んでみてくださいw

「楽毅」は、宮城谷さんの文章が肌に合わずダメでしたー。
当時の帯にあった「諸葛孔明が尊敬していた男」という煽り文句にめちゃくちゃ煽られたんですが。
他の方の本でお薦めってありませんか?

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