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2010/09/03

ガンガン2010年7月号 鋼の錬金術師第108話「旅路の果て」ネタバレ感想 その5

とりあえず今日はここまで。まだまだ続く予定です。一応下書きは感想だけでその12までかな? 
あとは「ぱふ」のインタビューの感想とか、鋼全体の感想とかがちょこちょこあるので。そんなのも間あいだに入れていこうかな、と思ってます。

・価値観のレート

例えば、Aを貰ったからAを返す、としたとき。
相手はなけなしのお金でAを自分に与えてくれたのに、自分は自分にとってはした金でAを返したとして。
それは本当に対価なのか? それに例え1を加えたとしても、相手以上のものを渡したと、自分は胸を張って言えるだろうか?
 
等価交換を崩すとすれば、あたしはそこだと思っていた。
たしか新井素子の「ブラック・キャット」シリーズだったと思うのだけど(自信無い)。
 
人に1何かして貰ったら2倍感謝しろ、人に1何かをしてあげたら1/4程度の行為だと思え、そのくらいで丁度釣り合いがとれる、というような事が書かれていて。
これって真理(真理くんじゃないよ)だなって思ってる。
人は(もちろん自分も含め)他人にしてあげたことを過大評価し、して貰った事を過小評価しがちだから。
 
等価と思うかは、本人がそれを等価と受け止めるかなんだと思ってる。
自分が想像していた以上のものを貰えたと思えばいつだって満ち足り、自分はもっと貰えたはずだと思えば不満がでる。
よく言われる、砂漠の真ん中で半分入った水筒の水を「もう半分しか無い」と思うか「まだ半分もある」と思うか。その違いなんだ。
30年近く前、1ドル360円台だったのが今は80円台であるように。お金ですら時代によって等価なんて変わるもの。
だから何を「1」と捉えるか。
そこを落としどころにするのかと思っていた。
 
水島版の落としどころはそこにあったと思っている。
「いつだって代価は少し足りない」。ダンテは現状に満足せず、自分はもっと幸せになる権利があるはず、そう思った。
「会った人、見たもの。苦しみ努力し体験した全ての事、それがお前の代価じゃないのか」。エドがホーエンハイムの言葉に納得したのは、エドにとってこの旅で得たものが大切だと思えたからだ。
 
自分の想像と違っていたから、それは間違っている。別にそう言いたいわけじゃない。
荒川先生が描こうとしていたのも本当はそこだったんじゃないのか? そう言う話をしている。
 
荒川先生自ら「いらないもの」と言ってしまった。そこに問題がある。
人とは何か考えた9年 人気マンガ「鋼の錬金術師」完結
少なくとも私はこのインタビューを読むまで「いらないもの」とは解釈していなかったのに、自らエドのあの行為を貶める事を言ってしまった。
なんでそんな言葉を使ってしまったのだろう。もっと言葉を選んで欲しかった。
   
何故エドの錬金術はアルと等価に成り得たのか。
それは錬金術が「エドにとって」価値のあるものだったから、何故それじゃいけない?
  
錬金術なんて使えない人は、この世から錬金術が無くなっても困らない。
無くても人は生きていける。そういう意味ではその存在自体に大して意味は無い。
それこそ、錬金術自体に「存在意義」なんて無い。
そんな人達にとって錬金術の価値は0だ。
錬金術があったから命を取り留めたという意味では価値があったかもしれないが、そもそも錬金術がなければ魂をもっていかれる事すら無かっただろうから、プラマイゼロだろう。
せいぜいが、壊れたものを「国家錬金術師 エドワード・エルリック」に直して貰えて助かった人にとって多少の価値が見込める程度だ。
 
けれど、エドにとっては、錬金術とは、10であり100であり、無限に価値のあるものだった。
錬金術を使えば母親は喜んでくれた。
アルの魂を取り戻せたのも錬金術のおかげだった。
アルの身体を元に戻す情報を得るのに、国家錬金術師という資格は便利だった。
ガキが2人旅を続けていくのに、食べて寝て切符を買って、生きていく為の資金を保証してくれた。
機械鎧を武器に錬成することで敵を倒す事も出来た。
腹が減った時に鍋を作る事も、アルの鎧が壊れた時に直す事が出来たのも。
何をするにしても錬金術は大層役に立ってくれた。
 
ダブリスで、錬金術を使わず手でオモチャを直そうとするイズミに対し、エドにこそ「錬金術でやれば簡単なのに」と思わせるエピソードがあればよかったのになぁと思う。
そういった錬金術を手放せないエドの描写があれば、多少なりともこのシーンの印象は違ったんじゃないかな。
そんなことを思ってしまう。
  
「自分にとって」大切なものを差し出す。そこに意味がある。
本当に大切ならばそれがたとえ、石ころでも、そこらの空き缶でも(いやあの世界観に缶ジュースはないわな)本人にとって価値のあるものであれば、それは等価になり得たんじゃないのか?
 
そして。
自分にとっての宝物も、質屋に出せば二束三文で叩かれる、世の中そんなものだ。
自分にとっての価値=他人にとっての価値 じゃない。
それもまた真理だ。
 
「頼って、過信して、失敗しての繰り返し」。
そんな風に錬金術を否定的に書くから分かりづらくなる。
 
今までずっとこれに守られてきた。
アルの魂を取り戻せたのも、グラトニーの腹から戻ってこれたのも、鉄骨にぶち抜かれても生き延びる事が出来たのも、全部錬金術のおかげだった。
ありがとう。でも、もうおまえがいなくとも、オレは大丈夫だ。やっていけるよ。
そんな風に言ってくれたなら、もっと分かりやすくなったのになぁと思ってしまう。
 
「錬金術」を自分の身から切り離す事で、血が流れても喚きたくなるほどの痛みがあっても我慢出来る。
その痛みにこそ意味があるのだから。
それくらい自分にとって価値のあるものを渡さなければ、真理はアルとの対価だと認めてくれないだろう。
だからこそ、今は耐える。耐える価値のある痛みなんだ。
    
おそらくね。
落としどころはそこだったんだと思ってる。
  
  
余談です。
面白いなぁ。FAだってほとんど同じ流れ、同じ台詞だったのに全然印象が違うや。
あのBGM、扉の見せ方、エドの声の抑揚に賜物、なのかな。
あちらは、「真理にとって」錬金術が価値のあるものだとエドは分かっていて差し出した、あたしはそう解釈してる。
FAのエドは、真理が欲しているものを熟知し、そのうえで勝負に出た。
「おまえが欲しいのはこれなんだろ? それを代価にしてやるんだ。もちろん文句はないよな。さあアルを返しやがれっ」そんな風に見えた。
「錬金術」を自分の身から切り離す事で血は流れても死ぬほど痛くても。それがどうした? そう言える。こんな痛みはもう乗り越えてしまった。だからにやりと笑う事すら出来る。
FAのエドは、単純明快で豪胆で、強気な勝負師だった。
 
 
なんだか、うまい具合にそれぞれの、最後のナレーションとかぶるというか補足説明みたいな内容になったけど。
それってホント偶然だったりするから笑えます。
んでも、それってこの解釈が遠からずの位置にあるって事じゃないのかなぁ。だったらいいなぁ。

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コメント

どうも、ぽんずです。これでまだ12分の5とは恐れ入ります。内容的には一番濃い部分な気もしますが。

「いらないもの」発言は確かにちょいと軽率だったかもしれませんね。なんかバッサリと切り捨てるような印象のある言葉ですし。他のインタビューでも似たようなことを言ってますね。
多少好意的に考えるなら、「いらないもの」の真意はただ単にエドにとって「無価値なもの」でなく、「エドがアルの代価として差し出せるものの中で最もいらないもの」ってな感じでしょうか。
別にエドは錬金術を否定してないし、アルもそこに可能性を追い求めている。
ただ、ここは多分りほさんとはっきり違う意見だと思うんですが、私はエドが錬金術を対価にすることに対しては痛みを感じてないと思います。だから「アルのためなら耐えられる」でもなく「みんながいるから耐えられる」でもなく「これがなくてもみんながいる」という言葉が出てきたんだろうなと。
エドにとって「錬金術」は半生を費やして会得した重要なアイデンティティだったけれど、作中で描かれた旅でそれ以上のもの、たとえば「人との絆」とかを得て、エドという人格の一要素でなく良くも悪くも「道具」に変わっていったんだと思います。もう「錬金術」がなくても自分でいられる、だからいらない。
でもそれは無価値になったわけではなくて、これまでの自分を象徴する要素だったからこそ、アルの対価たりえたのではないでしょうか。

あのシーンは最初に読んだ時には考える余地を残すためにあえて詳細な説明を省いたのだと思っていたので、勝手ながら荒川先生に「あそこはああいう意味だ」という発言はしてほしくなかったのが本音です。でも作者が込めたメッセージと読者の解釈が同じである必要はないと考え直しました。というわけでかなり好き勝手に補完した解釈を披露させてもらいましたが、明らかにおかしい点があったら指摘してもらえるとありがたいです。

投稿: ぽんず | 2010/09/04 08:51

>ぽんずさま
お返事が遅れてますごめんなさい。
これ以降もまだ、価値観とか、アイデンティティとかその周辺の記事をあげる予定でいます。
ですので、それを全部出しきったあとに、また改めてお返事させていただきますね。
少々お待ちください。

投稿: りほ | 2010/09/08 00:05

>ぽんずさま
お待たせしてすみませんでした。
もういい加減、しびれを切らしてレスなんて書く気ないんだろてめぇ、と思われている気がすごーくしているんですが。
やっとレスが書けます。多分。もうぽんずさまのコメントに被る部分は出し切った、はずっ。
 
>多少好意的に考えるなら、「いらないもの」の真意はただ単にエドにとって「無価値なもの」でなく、「エドがアルの代価として差し出せるものの中で最もいらないもの」ってな感じでしょうか。

このあたりは後に「ぱふ」でも触れられましたね。
「作り手から見てのことであって、エドは違ったかもしれませんが」だそうで。
ただ、こういう言い方(書かれ方?)をされてしまうと、新聞のインタビュー記事の時の「いらないもの」発言の反響に慌てて意見を翻したんじゃないかと裏読みしたくなってしまうんですよね。根がひねくれているもので(笑)。
だからこそ、そういう場合は新聞のインタビューでこう言ったら読者からご意見を頂いてしまったんですが、あれの真意は云々、ときっちり話題を振ってくれていればのにー、と思ってしまうのですが。
 

>別にエドは錬金術を否定してないし、
んー。そこが私は微妙だなぁ。
本文中にも書いてますが、子供のころからずっと慣れ親しんできた錬金術です。
ぽんずさまが言われる通り。
エドが錬金術を否定する要因は無いはずなんですよ。なんだかんだで今まで散々助けられてきたんですから。
なのに。
ぶちゃけ言葉悪いですが。私の中では、作者によって否定する台詞をエドが言わされてしまった感が強いです。
今まで私が読んできて認識してきた「鋼の錬金術師」のエド像からは、こんな台詞が出てくるとは思ってませんでした。
 
「頼って、過信して、失敗してのくり返し 踊らされたよな」。
「踊らされた」それは言い方を変えれば「振りまわされていた」という事です。
 
ぽんずさまなら、この台詞の流れにあった言葉を、この台詞の後に続けるとしたらどんなものを想像しますか?
今までさんざん錬金術なら何とか出来ると思い続け、それがふと立ち止まって冷静に辺りを見回した時。
錬金術に踊らされ、振りまわされていた事に気づく。
私ならこんな感じの言葉を想像します。
「いったいオレは何をやっていたんだ?」あるいは「結局オレにとって錬金術は本当に必要だったのか?」。
だから、上の台詞を、「錬金術を否定的に書いた」と私は書きました。
エドが、ではなく台詞が、なんですが。んー、このニュアンスの違い伝わるかなぁ。
 
 
>錬金術を対価にすることに対しては痛みを感じてないと思います
このあたりの私の考えは「ガンガン2010年7月号 鋼の錬金術師第108話「旅路の果て」ネタバレ感想 その7」に書いたのですが。
http://arisugawa.cocolog-nifty.com/alice/2010/09/201071087-27ed.html
要約すると。
錬金術師がエドの存在意義だとしたら、錬金術でなくなったエドに存在意義が無いという事になってしまう。
確かにきっかけは「錬金術師エドワード・エルリック」として人々と知りあったかもしれないけれど。
でも付き合いがはじまったのはエドワード・エルリックという人となりを好んだからこそであるということ。
エドから錬金術がなくなったからといって離れていく人などいない。
エドが存在意義だと思っていた(かどうかは知らないけど)ものは実はそうではなく。
ただ、エドは錬金術に依存していただけだった。
これさえあれば自分は大丈夫だと寄りかかり頼りきっていたもの、それが錬金術。
依存は心地良く、ライナスの毛布のようなもの。
それはぴったりと身体に張りついて癒着状態だった。それを切り離す、だから痛い。
  
そんな感じですね。要約って割りに長いじゃねぇか(爆)。
ぽんずさまの言われる「道具」に、までエドは気持ちを落とし込められないでいると思っているので、痛いと感じると私は思っているんだと思います。
 
>作者が込めたメッセージと読者の解釈が同じである必要はないと考え直しました。
そのあたりは私もまったく同感です。
「私はこう思う」「でも私はこう解釈するよ」
それでいいじゃないですかっ。 

投稿: りほ | 2010/10/24 22:35

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