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ホームズの不在

5つ目

謎解きを主体にした本格ミステリにおいて良く登場するのが、ホームズ役とワトソン役である。
読者はワトソンの視点で物語を読むのだが、得てして読者はワトソン役によってミスリードされる。
ワトソン役はいわゆる狂言回し的な役回りを持ち、もっともらしい物的証拠やロジックで読者を引っ掻き回し真実とは逆の方向へと巧みに誘導する。
そこに論理的な帰結でもってワトソン役の推理を論破するのがホームズ役の役回りである。
 
鋼においてエドはホームズ役ではない。強いて言うならワトソン役だ。


例えば、コーネロの持っていた賢者の石が力の使いすぎによって消滅した事に対し、エドはその賢者の石を偽物と見なした。けれど本物とされる賢者の石も使い切れば消滅している。
ならば、エドの「消滅したから賢者の石ではない」という理屈は成り立たない。

アルの魂を錬成あるいは、魂を引っ張り出した と言っていたが、別の箇所でアルは自分の魂はすでにこちらにあった事を告げている ならばエドが錬成したわけでも、引っ張り出したわけではないという理屈になる(我に視点を与えよ 参照)。

このようにエドの言葉が必ずしも真実であるとは限らない事が分かると思う。
意識的か無意識か分からないが、エドは読者をミスリードさせる役割りを担っているのだ。そして。

この物語にホームズ役は存在しない。
 
エドの理屈が誤りであった事を示唆し、正しい解を提供してくれる人物が存在しないのだ。

またホームズ役が不在ならせめて新事実が出てきた際に、エド自身が過去を振り返り自分の発言が誤りであった事を認めるシーンがあれば何とかなったかもしれないものの、それも出てこない。

これにより、エドの論理が覆されている事に気づけないまま読者は物語を読み進めてしまうことになる。

他のキャラクターについても然り。
謎を振りまくだけ振りまいて去っていったキャラクターの多いこと多いこと(笑)。

あの台詞って何だったの? あれってどうなったの?
そういった疑問に答えてくれるキャラクター、疑問をきちんと疑問視してくれるキャラクターが1人もいなかった事が、誤解や謎がいつまでたっても取り払われない要因となってしまった。

これにより、何が根本の原因なのか、何が決着すれば真の意味で物語は終わるのか、読み手側は迷走し、どうにもすっきりしない状態のまま、本当に物事は全て解決したのか、どこか腑に落ちないまま連載がは終わってしまったように思う。

別記事に、解明されなかった謎をあげる。

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