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鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星 ネタバレ感想5

「一により全てがあり、また全ての中に一がある 扉を開きし錬金術は、まさしく悪夢なり」
最初に入るこのナレーション。その声は子供の頃のアシュレイだ。



このあたりミステリオタ好みのテイストだよなぁ。
 
視聴者は勿論「一は全、全は一」を連想する。
もうちょっと詳しく記憶している視聴者なら、あ、でもちょっと違うな、と気づく。
そうか、クセルクセスでホーエンハイムが言っていた言葉だ。
この声の主はクセルクセスの錬金術に近い錬金術師なんだな、そう考える。
 
そして。
人は自分が認識している事に対して結構寛容で「うん、知ってる知ってる」と聞き(読み)飛ばしてしまう傾向にあること。
よりインパクトのあるものを直後に置く事で前述されていたものが何だったか失念しやすくなること。
この二つの心理を利用する。
 
「一により全てがあり、また全ての中に一がある」これが既知の錬金術の基本であると誤認させ、聞き流させ。
「扉を開きし錬金術は、まさしく悪夢なり」に耳を傾けさせる。
そして、この二つに何か繋がりがあるかもしれないと考えさせる余地を与えさせないインパクトを与える。

「錬金術」「悪夢」そして目の前の画面には川から水を吸い上げ消火している混乱の最中の絵。

ああなるほど。錬金術を失敗したか、もしくは悪い錬金術師が災いを引き起こしたんだな、とかね。
そんな事を視聴者は勝手に想像してくれる。

これで仕込みはOKっ(笑)。


ところがよーく考えてみると。実はホーエンハイムが言っていた言葉とは真逆なんだ。
ホーエンハイムが言っていたのは。
「一により全があり、一の中に全がある」「一が全を含まなければ全は無なり」。

原作の常識が思い込みによって上手く誤誘導してくれる。
 
 
「一により全てがあり、また全ての中に一がある 扉を開きし錬金術は、まさしく悪夢なり」
 
続けて読んでみる。続けて読めば分かる。
これは錬金術の基本なんかじゃない。
 
あの鮮血の星製造の錬金術の事だ。
 
ミロスの丘というひとつの土地がまるまる錬成陣の全貌であり、そこに住む人々の血によって1つの鮮血の星が作られる。
一により全てがあり、全ての中で一は作られる。その様はまさしく悪夢。
その悪夢によって作られた鮮血の星で人体錬成を行えば、人は真理の扉を見る事が出来る。
 
 
このナレーションはアシュレイの声だった。ならば。
真理の扉を開くとはどんな事なのか。その為にはどのような事が起きるのか。
アシュレイは知っていたはずなんだ。
おそらくは、冒頭に出てくる父親が持っていたあの本の中に書かれている。
 
 
ならばもしかしたら。
ハーシェルが本当に求めていたものは真理の世界に行く事なんかではなく。
真理の扉を開くことでこの世界に悪夢を呼び込み、自分と同じ絶望を全ての人に与えることだったのかもしれない。
 
 
「一により全てがあり、また全ての中に一がある」
ミロスの民に裏切り者呼ばわりされ、クレタの民に殺されかけた。
クレタに属していながらも、自分を世界から弾きだされ存在のように思っていたのだろうか。
全ての中の一ではない自分を意識していたのかもしれない。だから。
この世界が自分を言われの無い不幸に叩き落すなら、この世界そのものを不幸に叩き落してやろうと。
そんなことを思ったのかもしれない。
 
 
ハーシェルは自分の中の鮮血の星に、それこそ「踊らされた」んだ。
「一」を鮮血の星、それを飲み込んだハーシェルを「全て」と捉えると。
 
なんだかそんな気がした。

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